・「幸田文展」(世田谷文学館
世田谷文学館幸田文展」。幸田露伴は私のアイドルなのですが、にもかかわらず一冊の本も読んだことがないという歪んだ愛情です。明治の大文学者で、博覧強記。恐ろしいほどの読書家と、山本夏彦が書いていたような気がしていたから。
となれば、その娘さんである文さんはアイドルの娘。アイドルの二世であれば、またその人もアイドルなのです。というわけで、こちらも読んだことがありませんでした。
このまま一生、「アイドル」と遠ざけて終わるような気がしていたのですが、縁あって出かけてみました。読むか読まないかは自分で決めよう。というわけで、京王線は「芦花公園駅」。意外に不便なところにある、世田谷文学館に初登場。
こじんまりとした感じの良い建物です。小さいだけあって、展示の貧弱は隠しようもないのですが、私はそういう展覧会が結構好きで、ゆっくり見られるし、何より一点一点を丁寧に見る気になれるのが良いと思っています。展示物とともに、幸田文の歴史を一通り。
知識のない私にとってはピッタリの展示で、なんだか幸田文の歴史を分かった気になれます。特に「法輪寺三重塔」の話は涙なしには見られませんでした。展示物としては、幸田露伴小林勇あたりをじっとりと。難癖をつけながら拝見拝見。はいはい眼福と。
正直なことを言えば、最近はもう本など読まないわけです。特に「文学」などというものには完全にそっぽを向いてしまっているのですが、この幸田文さんの展示を見ると、その真ん中に「生活」が信条としてあるように感じられて、なんだか泣けました。
幸田文さんが文学なのかどうかも良くわからないのですが、とりあえず「崩れ」を注文したので、この勝負は私の負けということになりますね。この年になっても、時折「生きるってなんだろ」などと愚かなことを思うのですが、そういう気持ちに馴染んでしまった。


・「グランド・イリュージョン
グランド・イリュージョン』(原題:Now You See Me)は、2013年のアメリカ合衆国の映画である。監督は『トランスポーター』『タイタンの戦い』のルイ・レテリエ。原案はボアズ・イェーキンエドワード・リコート。


レイトショーは前売り券価格。本日の映画は、「グランド・イリュージョン」で渋谷シネパレス。原題は、「NOW YOU SEE ME」。


「ダニエル・アトラスら4人の男女で構成されたマジシャンチーム“フォー・ホースメン”がラスベガスでショーを行うのと同時にパリの銀行から金を盗み出すという大技を行う。 FBI特別捜査官のディラン・ローズとインターポールが彼らの犯罪を阻止しようとするが、失敗して途方に暮れ、マジックの種明かしの名手サディアスに助けを求める。」


wikipediaからのまんまびきですが、こりゃtwitter用かと思えるほど美しいまとめ。こういう話です。全編とにかく、サービス満点という感じが気に入りました。明るくて、楽しくて、ややツイスト。日曜日の夜に、ピッタリの映画です。明日は祭日だけど。
ダニエル・アトラス役の、ジェシー・アイゼンバーグが何だか変に魅力的。なんだか、ジャニタレみたい。

・10月20日(日)
「トランス」(原題「Trance」)
監督ダニー・ボイル。主演ジェームズ・マカボイ。

ぐるりぐるりと振り回されるサスペンス映画で、最後に放り出されるようなエンディングを迎えるのですが、編集が上手なのか飽きることもなく。ハラハラというか、ヒリヒリというか、集中力を切らすことなく観ることができました。
エリザベス役の、ロザリオ・ドーソンが最高に良い感じ。催眠療法師という、飛道具的な役ですが、恐ろしい環境に置かれながら、前に進むことで活路を切り開く姿を好演。とても素敵でした。
安っぽいんだけど、どこか引っかかりのある映像演出は特徴的。監督の芸風? ひまわりのように明るいラストシーンも印象的。本当は「とても陰惨な出来事の後だというのに、それでいいのか」と思わず突っ込みたくなりましたが、とても好みです。


・10月27日(日)
「ゴースト・エージェント/R.I.D.P」
漫画「R.I.D.P」原作。ロイ・パルシファーとライアン・レイノルズのバディ。「MIB」の亜種という印象。
アメリカの批評家の評判は最悪だったみたいだけれど、そこまでひどくない印象。まぁ、良くもないけど。


あとワタリウム寺山修司世田谷文学館幸田文と新宿の大トマソン展に行きたいな行きたいな


ワタリウム美術館寺山修司展 ノック」
会期 2013年7月6日[土]〜10月27日[日] 11月24日まで延長
休館 月曜日 [7/15、9/16、9/23、10/14は開館]
  開館時間 11時より19時まで [毎週水曜日は21時まで延長]
  入場料  大人 1000円 / 学生[25歳以下] 800円 
ペア券:大人 2人 1600円 / 学生 2人 1200円
会期中何度でも入場できるパスポート制チケット


世田谷文学館幸田文展」
2013年10月5日(土)〜12月8日(日)
[会場] 世田谷文学館2階展示室
[休館日] 毎週月曜日(ただし10月14日、11月4日は開館、翌日休館)
[料金]
一般=700(560)円
高校・大学生=500(400)円
小・中学生=250(200)円
65歳以上、障害者手帳をお持ちの方=350(280)円
※( )内は20名以上の団体料金
※「せたがやアーツカード」割引あり


・新宿眼科画廊「大トマソン展」
●会期
11月1日(金)〜11月13日(水)
12〜20時 *木曜休廊/水曜日は17時まで

●会場
新宿眼科画廊
〒160-0022 東京都新宿区新宿5-18-11
03-5285-8822

●会期中のイベント
超芸術トマソン物件報告認定会」
今回の重要物件の報告、赤太郎をめぐる考察、参加者が持ち寄った物件などを互いに検討します。
11月10日(日)、14時30分開場、15〜17時
新宿眼科画廊 スペース0
参加費無料

●報告募集
会期に合わせ、物件の報告を募集中です。報告書はセンターのFacebookページよりダウンロード可能です。集まった物件の中から展示させていただきます。10月 日締め切り。

貞子3D

かつて、荒いモノクロ映像で井戸の中から長髪の女性が這い出てくる、というビジュアルイメージで、一世を風靡した映画がありまして、その映像を観た者は死ぬという分かりやすさも相まって、大ヒット御礼だったわけです。「来ーる きっと来るー きっと来る」


「リング」は、もちろん作家の鈴木光司の代表作でもあり、「見たら死ぬぞー」というサスペンスを追いかけていく内に三部作となり、最後はスーパーサイエンスに着地するという、二作目まではまぁまぁ面白いという、結構困った物件でした。


このシリーズの映画化作品はこれで5作目ということで、タイトルはそのものずばり「貞子3D」。伝説的黒髪調理能力少女・貞子が3Dになって登場! というわけで、今度も見たら死ぬんだと思います。


「ループ」以降の鈴木光司の話が面白かったためしがないので、原作に鈴木光司の名前があっても、安心はできません。公式サイトは、まさかの3D押し。マーティン・スコセッシとそのスタッフでももてあまし気味の3Dを、上手に使えるんでしょうか。大量の火薬の臭いをかぎながら、行ってきましたTOHO CINEMAS渋谷。


最初の十分で思ったことは、「まず石原さとみさんはかわいい」と「これ鈴木光司本人は関わってねーな」ということでした。なんにせよ、脚本がひどすぎるような。ただ、今考えてみると現在の鈴木光司の実力ってこんなもんかもしれない。


全体の構造は、今時はほとんど見かけることが無くなったような気がするショッカーで、例えば大きな音や、一瞬の演出でびっくりさせるタイプの映画でした。そういえば初代「リング」もそっちよりの映画で、その当時も「今時珍しいなぁ」と思った記憶があります。


ただ、「リング」は変なジャーナリスティックな面がフックになっていたような気がするのですが、そういう要素は一切無くなってしまったのが残念でした。その空いた分は、クリーチャー要素を加えてあるのですが、まぁさて。さてはて。


ザックリと言えば、この映画は「お化け屋敷の実写化」で、そういう意味では3Dメガネが良く似合っているわけです。クリーチャー的なものもしかり。繰り返し多用される演出も、そういうデモだと思えば納得かも。ならば、もうちょっと凝った仕掛けが観たい気がしました。


ストーリーの支援もなく、幸薄そうな感じが良く似合う石原さとみさん一枚で、必死に画面を支えるのはさぞかし大変だったと思います。そういう意味で、エンディングでは私もホッとしました。無事終わって良かった。1時間半が長いと思ったのは久しぶり。


「いくらなんでも、これはまずいだろ」、と思いながら観ていたのですが、それでも、まぁなんだか楽しかったので、俺ってほんとにどうでもいいんだな。色んなことが。待ち合わせに二時間前に着いてしまって、時間を潰したい人におすすめです。

シャーロック・ホームズ シャドウゲーム

夕飯を何にしようか考えていたのですが、映画館に近い、というか真下にあるので蒙古タンメンを食べてみました。全然まずくないんだけど、なんか「餌感」がハンパじゃなかったです。というわけで、今日は「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」。TOHOシネマズ渋谷。


開始早々、ロバート・ダウニー・Jrが、高田純次張りのホームズを演じているのを見て一目で好きに。アイリーン・アドラーとおぼしき女性といちゃいちゃした後に、ストップモーション多様のアクションシーンが入れば、「あぁそういうことか」と納得しました。


軽妙なやり取りと、派手目なアクション。もちろん推理も超スピード。これは、「ストーリー オブ シャーロック・ホームズ」ではなく、(誤解を恐れずに言えば)「実写版ルパン三世」ですね。ロバート・ダウニー・Jrルパン三世ジュード・ロウのワトソンが次元大介です。


もう、実に楽しい映画でした。ダウニー・Jrのホームズは、まさに魅力の塊という感じ。ストーリーは退屈するところなく、アイディアがぎゅうぎゅうに詰め込まれているシーンの数々も楽しく、「約束」のエンディングまで一直線! こんなに映画を楽しく観たのは初めてかも。


ダウニー/ホームズと、ジュード・ロウ/ワトソンのコンビは死ぬほど愛されて良いと思います。「従来に無いホームズ像」とかそういうことではなくて、もっと単純に良いコンビを観たなーと思いました。日曜日の夜に観る映画が備えるべき、あらゆる要素が詰め込まれている映画だと思います。100点!

ヒューゴの不思議な発明

いくつか封切となったものがあって、しばらく選ぶ映画に困らない感じです。「TIME」「戦火の馬」「ヒューゴの不思議な発明」「シャーロックホームズ シャドウゲーム」辺り。趣味から言えば、「戦火の馬」が絶対に当たりなんだけど。


時間の関係で、「ヒューゴの不思議な発明(3D)」にしてみました。TOHOシネマズ渋谷。3D映画は初体験で、少し色の入ったレンズ入りのプラスチックの眼鏡をかけて鑑賞です。映画代は2200円。自分は値段をあまり気にしないタイプだと思っていたのですが、「たけーな」と思ったよ。やっぱり根が貧乏人だよ。


「飛び出す」に関して言うと、特にどうという感想もなく、まぁこんなもんだよね。確かに立体に見えて、最初楽しいんだけど、すぐに慣れちゃう。今日観ている限りでは、効果的に使える状況は今のところ少ないように思いました。これから、研究が進んでいって、なんかスゲーのが出てくる気はするけど。


ただ、この映画の画面はとても良くて、それは別に飛び出さなくてもステキ。1930年代のパリが舞台だそうですが、セットがかっこいいし、衣裳やファッション、惜しみなく突っ込まれている大量のエキストラ等等、360度死角なしの撮影という感じがします。


そして、古い映画を再現して流すシーンが何回かあるのですが、これが精彩そのものという感じで、ホントに素晴らしい。目が釘付けでした。私はノスタルジー愛する人間の一人なのですが、現代の技術を使って美しいノスタルジーを作ることが出来ると知って目から鱗でした。


お話は、子供の大冒険物と見せかけて、実は「映画よありがとう!」みたいな映画であったことにびっくり。素晴らしい映像に反して、若干お話がおろそかに感じられるのは、私自身がスレてしまったからかな。何か一つ、マジックを感じられたら熱狂できたかもと少し残念でした。


どうやらこの映画は、原作があるようなのでそれは読みたいですね。どうも変てこな脚本だなと思いながら観ていたのですが、本を読めば分かるのかなと思ったので。沢山挿絵の入った小説なんだそうですが、子ども向けなのだろうか。そうだといいな。

人からものを薦められることもあまり無いという、少し冷たい風が吹きぬけて行くような生活なのですが、珍しくそういうことがあったので出かけてきました。「サヴァイヴィングライフ」下高井戸は、下高井戸シネマ。本日最終日。駆け込んだという感じで。


映像がとても変わっていて、写真を切り抜いたものを動かすアニメーションが基本。それに、顔のクローズアップ、口元のクローズアップを多用するという、「控えめに言ってすごく変」、な感じでした。(こう書いてもなんだか分からないね) 観ればすぐに分かるんだけど。


でも、「思いつきでそうしちゃった」という風ではなく、丁寧に作られている感じがとても良かったです。おそらく東欧の映画だと思うのですが、画面から来る冷たくて乾いた空気みたいなものが、そういうアニメーションにピッタリ。それでいて、どこか色っぽい感じはこの監督の才能。


ストーリーは、中年の男性が変わった夢を観るようになり、やがて現実と夢の世界の区別が曖昧になっていく、というものですが、映像が映像だけに元から曖昧だと私は思いました。まぁ話はどうでも良く、作家が作った映像世界を楽しむというのが本筋なのでしょう。


手間ひまはかかりそうだけどお金はかかってない感じとか、笑えるんだか笑えないんだか分からない微妙な雰囲気づくりとか、かなり独特な作家性を持った方だと思います。監督自身が、そういったことを全部韜晦するのがオープニングに当てられているのが象徴的。


全般に流れる、「頭の良い人が延々と悪ふざけをしている感じ」が個人的には楽しかったです。時折、ふとギラリとしたものを見せたりして人をドキリとさせてみたり。そういうクセのある人なんでしょうね。


帰りの電車で思い返しながら、ふと伊丹十三の顔を思い出したりしました。なんでなんだろうね。自分で自分の映画に出て、どこか悪ふざけをしている感じだろうか。


追記・公式サイトとやらを見ていると、この人がシュヴァンクマイエルさんなんですね。アートでおしゃれな感じの雑誌に出ている人、という印象だったのですが、なるほどそういう方が好きそうだ。チェコだし。今度恐れずに雑誌とか立ち読みしてみよ

ドラゴンタトゥーの女

とても具合が悪かったので、風邪を引いたかな、と思っていたのですが、少し昼寝をして熱を測って見たら36.0度。完全に平熱以下で、「あぁこれはあれか。働きたくない病というやつか」と納得。あるていどの血塗れ感と、長い尺が欲しかったので、「ドラゴンタトゥーの女」を選びました。TOHOシネマ渋谷。


主演の、ミカエル役はダニエル・クレイグ。とても瞳のキレイな人。こんな友達がいたらいいな、と思えるとてもチャーミングな女の子「ドラゴンタトゥーの女」をルーニー・マーラーが演じています。二人とも良かったですが、マーラーさんは初見で、とても好きになりました。


中年の切れ者オジサンと、すごくとんがったパンキッシュな女の子が、タッグを組んで事件に挑むというのが最大の見物なのですが、そのアンバランスさがなかなか上手く収まっていると思いました。クレイグかっこいいし、タトゥーの女がとてもかわいらしい。


失踪事件・科学捜査・少々のペダンティズム・トラウマに忌まわしい歴史と、通り一辺・もはや時代劇の一種とすら思えるサスペンス映画の仲間ですが、最近の映画の脚本ってホントにリズムが良くて、二時間半もさほど長いと思いませんでした。出来が良かったんでしょうね。


ストーリーにツイストが無いだけに、ストーリーを追うよりも役者の魅力を堪能するのが今風なのかも。本当にときどきWOWWOWの海外ドラマを観るのですが(「CSI」とかそういうヤツね)、話のリズムがとにかく良くて、何観ても面白くて少し困ります。