人からものを薦められることもあまり無いという、少し冷たい風が吹きぬけて行くような生活なのですが、珍しくそういうことがあったので出かけてきました。「サヴァイヴィングライフ」下高井戸は、下高井戸シネマ。本日最終日。駆け込んだという感じで。


映像がとても変わっていて、写真を切り抜いたものを動かすアニメーションが基本。それに、顔のクローズアップ、口元のクローズアップを多用するという、「控えめに言ってすごく変」、な感じでした。(こう書いてもなんだか分からないね) 観ればすぐに分かるんだけど。


でも、「思いつきでそうしちゃった」という風ではなく、丁寧に作られている感じがとても良かったです。おそらく東欧の映画だと思うのですが、画面から来る冷たくて乾いた空気みたいなものが、そういうアニメーションにピッタリ。それでいて、どこか色っぽい感じはこの監督の才能。


ストーリーは、中年の男性が変わった夢を観るようになり、やがて現実と夢の世界の区別が曖昧になっていく、というものですが、映像が映像だけに元から曖昧だと私は思いました。まぁ話はどうでも良く、作家が作った映像世界を楽しむというのが本筋なのでしょう。


手間ひまはかかりそうだけどお金はかかってない感じとか、笑えるんだか笑えないんだか分からない微妙な雰囲気づくりとか、かなり独特な作家性を持った方だと思います。監督自身が、そういったことを全部韜晦するのがオープニングに当てられているのが象徴的。


全般に流れる、「頭の良い人が延々と悪ふざけをしている感じ」が個人的には楽しかったです。時折、ふとギラリとしたものを見せたりして人をドキリとさせてみたり。そういうクセのある人なんでしょうね。


帰りの電車で思い返しながら、ふと伊丹十三の顔を思い出したりしました。なんでなんだろうね。自分で自分の映画に出て、どこか悪ふざけをしている感じだろうか。


追記・公式サイトとやらを見ていると、この人がシュヴァンクマイエルさんなんですね。アートでおしゃれな感じの雑誌に出ている人、という印象だったのですが、なるほどそういう方が好きそうだ。チェコだし。今度恐れずに雑誌とか立ち読みしてみよ