貞子3D

かつて、荒いモノクロ映像で井戸の中から長髪の女性が這い出てくる、というビジュアルイメージで、一世を風靡した映画がありまして、その映像を観た者は死ぬという分かりやすさも相まって、大ヒット御礼だったわけです。「来ーる きっと来るー きっと来る」


「リング」は、もちろん作家の鈴木光司の代表作でもあり、「見たら死ぬぞー」というサスペンスを追いかけていく内に三部作となり、最後はスーパーサイエンスに着地するという、二作目まではまぁまぁ面白いという、結構困った物件でした。


このシリーズの映画化作品はこれで5作目ということで、タイトルはそのものずばり「貞子3D」。伝説的黒髪調理能力少女・貞子が3Dになって登場! というわけで、今度も見たら死ぬんだと思います。


「ループ」以降の鈴木光司の話が面白かったためしがないので、原作に鈴木光司の名前があっても、安心はできません。公式サイトは、まさかの3D押し。マーティン・スコセッシとそのスタッフでももてあまし気味の3Dを、上手に使えるんでしょうか。大量の火薬の臭いをかぎながら、行ってきましたTOHO CINEMAS渋谷。


最初の十分で思ったことは、「まず石原さとみさんはかわいい」と「これ鈴木光司本人は関わってねーな」ということでした。なんにせよ、脚本がひどすぎるような。ただ、今考えてみると現在の鈴木光司の実力ってこんなもんかもしれない。


全体の構造は、今時はほとんど見かけることが無くなったような気がするショッカーで、例えば大きな音や、一瞬の演出でびっくりさせるタイプの映画でした。そういえば初代「リング」もそっちよりの映画で、その当時も「今時珍しいなぁ」と思った記憶があります。


ただ、「リング」は変なジャーナリスティックな面がフックになっていたような気がするのですが、そういう要素は一切無くなってしまったのが残念でした。その空いた分は、クリーチャー要素を加えてあるのですが、まぁさて。さてはて。


ザックリと言えば、この映画は「お化け屋敷の実写化」で、そういう意味では3Dメガネが良く似合っているわけです。クリーチャー的なものもしかり。繰り返し多用される演出も、そういうデモだと思えば納得かも。ならば、もうちょっと凝った仕掛けが観たい気がしました。


ストーリーの支援もなく、幸薄そうな感じが良く似合う石原さとみさん一枚で、必死に画面を支えるのはさぞかし大変だったと思います。そういう意味で、エンディングでは私もホッとしました。無事終わって良かった。1時間半が長いと思ったのは久しぶり。


「いくらなんでも、これはまずいだろ」、と思いながら観ていたのですが、それでも、まぁなんだか楽しかったので、俺ってほんとにどうでもいいんだな。色んなことが。待ち合わせに二時間前に着いてしまって、時間を潰したい人におすすめです。