鑑定士と顔のない依頼人

渋谷に上映館がないので、新宿武蔵野館まで足を伸ばしました。監督は、「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ。「海の上のピアニスト」とかも監督なさった方のようです。
超一流の美術鑑定士、バージル・オールドマンのところに来た査定依頼。資産家の両親が残した絵画や家具はあれど、依頼人は一向に姿を現さない。大いに腹を立てながらも、受話器越しに流れる若い女性の声に振り回され、彼女のことが気になって仕方がなくなってしまう…… 
ヴァージル・オールドマン役の、ジェフリー・ラッシュの演技がとにかく強力で、眼が離せませんでした。オールドマンが歩く、オールドマンがしゃべる! 勝利も、苦さも、「総て自分のものであるという」ような圧倒的な存在感。好きになってしまいました。
ストーリーはおそらく「完璧」に近い印象。監督が自分で撮りたいように書き、とてもうまく行っていたように感じました。「ミステリー」と呼ぶには謎がなさすぎますが、「一つの物語が持つべき要素」を十二分に含んだ出来栄え。
こういうのなんていうのー、「極上」? 書いててくそ恥ずかしいな。思わず赤面なんでこれはやめ。何度でも反復可能な、実に汁っ気たっぷりのお話でした。いまだに思い出しては、自分好みの答えはないもんだろうかと探していたりもするのです。
「現れない女性」役のシルヴィア・ホークスがとてもきれい。60代の男性が恋するにはちょっと若すぎる気もしますが、まぁ情熱の国イタリアの監督さんだからね。ありなんだろうね。
本当は色々書きたい気もするのですが、なんだかうまく書けなくていろいろもどかしい。そういうことも含めて、とても良い映画だと思います。年末のカップルで出かけるのにピッタリ。観た後で、上手に会話が出来なくなること、請け合います。