J.エドガー

ちょっと用事が立て込んでいて、時間がとりづらかったんだけれども、20時15分からというちょうど良い時間のものがあったので出かけてきました。「J.エドガー」は、渋谷シネパレス。


私は、フーバーについて、FBIの創設者で容貌怪異。ありとあらゆる手段で得た情報を元に、時の権力をコントロールした伝説的な人物、というとおり一辺のイメージしか私は持っておりませんでした。そんな強面に、レオナルド・ディカプリオが当たっています。


ディカプリオは、「スーパーベビーフェイス」と呼んでも申し分ない役者さんですが、この人は役者としての純度がとても高く、老年のおっさんをやっていても違和感なし。後半になると、「もう動いてしゃべっているだけでいいよ」と思うほど、楽しく観ていました。


メイク技術の発展もあるんでしょう。同じ役者さんが、若い頃から老いた時期までを、通して演じるメリットの方が大きいような気がしました。声が若いとかね、そういうこともテクニック的に回避されている感じで、配慮に感心したり。良い役者を良く観せている。


そして、なによりこのクリント・イーストウッドという監督がスゴイ人なんだと思います。おそらく、この人は何でも面白く見せてしまう魔法を持っている。短躯で、小心者。見栄っ張りで、残酷。そんなフーバーを、大事に大事にラストシーンまで連れて行きます。


「歴史的なシーン」をドラマチックに入れることもなく、ただひたすら人間に寄りそっていく手法は、なんだか突き抜けていて清清しい。というか、伝記映画なのにこんなに「ある種ロマンチック」に撮ってしまって良いもんなんだろうかと、心配になってしまいます。


シーンには常に間が有り、その隙間は「こんな時に自分ならどうするんだろう」という問いが、丁度挟まるくらいに空いている。こりゃ、大したもんだとほとほと感心してしまいました。他の映画もぜひ観たい。何を観ればいいんだろうか。


昨年観た、磨き上げられきった作品としての「コンテイジョン」も素晴らしかったのですが、私は今日観た「イーストウッドの魔法」の方に一票を入れたいと思います。ここ最近観た映画の中では一番良かったです。まぁ、せいぜい10本くらいの中からですけど。