名前を知らないので、指をさす

明日が祭日だということをすっかり忘れていて、慌しく郵便局に向かったのが五時。
そこから、午前中出かけてしまったしわ寄せを伸ばすために、あたふたと雑用をこなして夕ご飯。
缶ビールを一本飲んで、すっかりやる気をなくしてしまって夜の十時。
一点、メール便を出さなくてはいけないことを思い出して、しぶしぶコンビニまで出かける夜の十時。


夜の空気は、一ヶ月前に比べて遥かに研ぎ澄まされていて、鼻の下あたりを切りつけてくるようです。
一時、公園にたむろしていた高校生たちの姿もなく、冬は夜を静かにします。文字通りの意味で。
冴える空気のおかげか、星が良く見えます(東京にしては)。
私は空を見ながら、それでもどこか前かがみな感じで、静かな裏道を歩いていました。


まぁ、空を見上げても、私は空にオリオン座の姿しか見つけることはできないのですけれど。
ただ、逆を言えばオリオン座さえ見つけることができれば、空に星座があるのだ、ということを思い出すことには事足ります。
カシオペア座、北斗七星、冬の大三角形というのもありましたか。あれは夏だっけか。
その星座たちがどこにあるのかは私は分からないのですが、それでもそれらはその空の上にあって、分かる人には分かるように夜空に輝いているのでしょう。私の知っている人が、私の知らないどこかで、小さく息をしているように。


坂を下りながら、星と星座の向こうに幾人かの人の顔を思い出していると、見慣れた窓から光が漏れていました。
電気を消し忘れていたようです。