幼いころは、

幼いころは、
人よりたくさんの人生が生きたいと思っていて、少し考えて、
「人よりたくさんの人生を生きるには、人よりたくさんの時間を使うことだ」
という結論を出しました。


人よりたくさんの人生を生きる、というのがどういうことかというと、
例えば、人の二倍いろいろなことをやる、できる。そういう単純なことです。
普通の人が80年間生きるならば、160年分の人生を生きたい。
人が一日8時間活動するなら、一日16時間活動したい。
人がもっと欲しいというなら、自分はもっともっと欲しい。
いたってシンプル。


長じて、あたかも「時計のように」正確に平等に流れていく時間の中で、
そういう思いは時折思い出されるものの、静かに沈んでいることが多くなりました。
ただただ忙しいばかりの生活なのは、その時の名残なのかと思わなくはないですが、
忙しいのはお互い様だということも、最近は分かるようになったわけです。
そしてある時ふと気がついたのは、「人の二倍の人生を生きる」ということは、
実は「人の半分だけ時間を使う」なんだということでした。
私にとってはすごい発見だったのですが、一方で「手遅れなんだな、もう」と笑えてきたのを覚えています。