雨でカサカサ

世間は梅雨、という話もあるわけですが、
今日の東京は午後に入ると雨はもう止んで、強めの陽射しが地面にあたっていました。
この少し汗ばむ感じは、いよいよ夏ですね。


封筒を片手にいつもの道を歩いていると、目の前を大きなランドセルをしょった男の子が歩いていました。
その子は両手に二本の傘を持っていました。
お母さんに、「あんた昨日学校に置いてきた傘、絶対持って帰ってきなさいよ!」
とでも、どやされたのでしょうか。
彼はいかにも重たそうに、傘をアスファルトに突き立て突き立てしながら、フラフラと歩いていました。
その表情もいかにも憎々しげなのがなんだか面白く、思わず顔をそむけて笑ってしまったわけです。


今となっては、小学生だったころは毎日楽しかったような気がしてしまいます。
が、実際はそんなことなかったのだと思います。
私は、なんだか良くひっぱたかれた覚えがありますし、
怒りや悔しさのあまり、涙を流したこととて十度や二十度では済みますまい。
きっと今日の彼のように、憎々しげな顔をして、まわりに当り散らしながら歩いていたこともあるでしょう。


そういう思いって、どこに行ってしまったんだろうなぁ。
今、すぐそばにあることに上書きされてしまったのか、昔「いやでいやでしょうがなかったこと」って、
びっくりするほど思い出せないものですね。
今となっては、大したことではなかったということなんでしょうか。そんなこと、ないと思うのですけれど。
彼も今日のことなんか忘れてしまうんだろうか。一本ではあきたらず、二本の傘を持って帰ったこと。
自分にもそんなことがあったと思うのですけれど、
やっぱり正確なことが思い出せない。