雪の降る町(あるいは区)

なんか、そろそろ来るのではないか、と多くの人が感じていたと思うのですが、東京は一日中雪でした。
それも結構大仰で、家の屋根は昼ごろには一面白く覆われていました。
やたら寒いなと思っていたのですが、ようするに氷の下に住んでいるわけで、それも当たり前の話です。


寒いのは嫌いですが、雪はそうでもないので、ぼんやりと見入っていました。
温度がそれほど低くないので、大ぶりなボタ雪です。
昼間なのに薄暗いのは、当然雲のせいですね。
いつもの見慣れた景色のはずなのに、白くコーティングされた風景は、やはりどこか知らない景色めいています。
空から白い雪は絶え間なく落ちてくるのですが、その雪一つ一つは全く統一感がなく、それぞれ思い思いに、好き勝手にやってきているようにしか見えません。
そのせいか、世界で動いていているものは雪だけなのではないかと、錯覚しそう。
そして、暖房の入っていない部屋でぼんやりしていると、体が急にブルッと震え不平を訴えます。
私はジャンパーの前をかきよせて、自分の部屋に戻りました。


時折、ドサリと後ろの方から音がします。
屋根に積もった雪が、自分の重みに耐えかねて滑り落ちているのでしょう。
明日にはもう降り止んでいるそうなので、彼らの命もそれほど長いことはないでしょう。
積もれば「寒い」と言われ、消えれば「惜しい」と思われる。
雪にしてみれば、「勝手にせい」という話なのでしょう。
変なことを言いますすが、東京の雪はこちらを見てシニカルに笑っているような気がするのです。他のところで見る雪はそうでもないのに。