『ルドンの黒』 オディロン・ルドン Bunkamura ザ・ミュージアム,2007

渋谷駅の階段を下りていると、必ず一風変わった「まっくろくろすけ」と目があっていたので、Bunkamuraにルドンが来ていたのは知っていたわけです。それで、たまには文化的なことでも、ということでヒラリと行って参りました。
しかし、ルドンとロダン、一字違いでえらい違いですね。
まぁ、そんなことを誰も心配してないんで、どうでもいいですね。


版画作品を中心に、200点くらい並んでおりました。
会場のほとんどの部分は、黒一色刷りのリトグラフで占められています。
看板に嘘偽りなき、「ルドンの黒」。


まず、行って気づいたのですが、私はリトグラフのあの平板な感じがあまり好きでない様子。版画にはあの「紙を押した感じ」が欲しいようです。なんか、発見。
とは言うものの、作品はなかなか良かったです。
蜘蛛、一つ目の巨人(上目づかいでニヤリ)、巨大な目の気球辺りはポスターにも登場する有名どころですが、実物は一風変わった感じがします。もっと大きいものだと思い込んでいたのですが、実物はそうでもない。ルドンの作品には、拡大に耐えうる精緻さと構築性がうんぬんというのはどうでもよく、良く似ているけれど別の作品に見えるという感じですね。これが本物の力か! と言いたいところですが、まぁ画面の密度が上がってるからそう錯覚してるだけかもしれません。
その他の作品に関しても、丸いものがあると顔描いてしまったり、目にしてしまったりというセンスは、大先生と呼ぶにはかなりユニークな感じがしますね。正直、単純に水木しげるのことを思い出してしまいました。妖怪画家として。
なんせ分かりやすいものがポツポツとあって(例えば植物と目のキマイラはすごい密度でギョッ)、私のような素人でも楽しめましたね。魚の顔に人の顔がはめこんであったりとか。
「なんでこういう風に描けるんだろう」と単純に不思議な思いが胸をよぎります。


色の入った作品は、ほんとに両手に足りるほどしか出ていなかったのは残念でした。あんまり好みのものも無かったし。
まぁ、これは今後のお楽しみという感じでしょうか。
全体の総量はちょうどよく、これ以上多かったら私はお腹いっぱいでぐずっていたと思います。ナイス。
一つ目、巨人、蜘蛛、妖怪! とはしゃいでいた感じですが、実は一番印象に残っているのはうつむいている男のデッサンだったりします。
自分の先生にあたる人物が亡くなった際に描いたものだということだったと記憶していますが、静かで、うつむいてて、それで、うんまぁそれだけ。