ランボーと扇風機

ランボーを見ていたのですが。
超おもしろいっすね、ランボー。ちょっとCMが多すぎて、やっぱりテレビってダメだという感じでしたけど。
我慢して見ました。


ランボーは、風が吹くのを待っている人なのです。
いきなり、わけわからないでしょうけど。
いや、扇風機にあたっていたのでね。ただ、そう思ったという短絡的なことだったのですけれど。


ご存知のように、ランボーベトナム戦争の英雄であるところの、超天才兵士なわけです。
彼の上官だった大佐は、ランボーを憎む保安官に「200人で攻撃するつもりなら、200枚の死体袋を用意しておけよ」というほどの、スーパーっぷり。全員袋に入ってしまったら誰が袋につめるのだろう、という疑問はさておき、そのスペシャルな姿はまるでハリウッドスターです。
最初、ランボーは片田舎の小さな町で、浮浪罪で捕まってしまいます。そこの保安官の一人が、ランボーに目をつけるところが、ありとあらゆる悲劇の幕開けでした。一人の、いかにもな悪役・いじめ役の警官が、凡人が天才を恨むこと甚だしく、あの手この手でランボーをいびるのです。そして訪れる瞬間。怒り心頭に達したランボーは、またたくまに保安官たちをノシて、山へと脱走します。
保安官たちは、山狩りへと向かうわけですが、サバイバルに関して、ベトナムの泥沼を這っていたランボーにかなうわけがありません。
またたくまにぶっとばされて、ほうほうの体で逃げ帰るのでした。
しかし、町を守る保安官の長はあきらめません。
今度は、警官・州兵を動員し、ランボーを追い詰めようとします。(そこで上の200人うんぬんの話が出てくるのですね)
すったもんだがありまして、死んだと思われたランボーなのですが、実は、というかやはり生きていました。
帰っていくトラックの中から武器を得たランボーは、町へ帰ってきてガソリンスタンドを燃やし、保安官署を猛攻撃。天才兵士を怒らせた代償は大きく、復旧までにはずいぶん時間がかかりそうなほど、壊されてしまいましたとさ。
まぁ、こう書くと「村の昔からいる神様を粗末にしたために、たたりにあって村がひどいめに遭う」みたいな、日本の昔話にありがちな展開という感じなのですが、そこは現代劇。ランボーは、ただの道祖神ではありません。ベトナム戦争の残した深い傷が、ランボーをただの天才兵士として終わらせません。
「せっかく戦争から帰ってきたのに、俺にはどこにも行くところがないんだ」
最後の戦いを終え、そう訴えるランボーに、声をかけてあげられる人はいないのです。


暑い日が続いています。
人は心の片隅で、一筋の風を待っています。
体を涼しく撫でる、わずかで、ホッとするような、一筋の。
戦場での功を称えられ、勲章を貰って帰国したランボーを待っていたのは、戦争反対のデモ隊でした。
平和な時代に、お前は、不要だ、
知らない人の不愉快な声はまことに耳に暑苦しく、ランボーはわずかでもいいから涼しい風が吹くことを願ったでしょう。
私も願っています。
吹くことのない風を待っています。
ランボーに便乗です。
かなわない思いを一筋の風になぞらえて、扇風機に向かって、あわわわわとか言いながら、そんなことを考えていました。