夏の少し前

台帳と標札を買いに出かけて行ったのですが、案外遠くて汗をかきました。
日差しもどこか一回り強くなったような感じで、背中が汗ばみます。
夏の到来が近いわけですね。


ひたいを拭いたくなったあたりで、どうやら目的地へ到着したようでした。
そこでは、道路脇に出したテーブル付きの椅子に座って、おじさんがぼんやりとしていました。
べっこうの眼鏡をかけ、白髪を丁寧になでつけているそのおじさんは、誰かが来るのを待っているような、そうでもないような。
どこかを見ているような、物思いにふけっているような。
ようするに、ぼんやりしている、というのが一番私の印象に近い感じで座っていました。


私が用件を告げると、そのおじさんは慌てて席を立ち、私に自分の腰掛けていた椅子を勧めると、奥の方へと消えていきました。
私は、その椅子に座っていいものかどうか思案していると、おじさんはすぐに書類を片手に戻ってきて、再度私に席を勧めました。
そこで私は腰をかけて、しばらくおじさんと話したあと、目的のものを手に入れ、お金を支払い、少し雑談してから挨拶をして別れました。
その際、お釣りがうまく数えられなかったりしてどたばたしたりもしたのですが、まぁ大過がなかったことも付け加えておきましょう。


話は飛ぶのですが、昔住んでいた町にプラモデル屋さんがありました。
そこの店主であろうと思われるおじさんは、日中パイプ椅子を店の前に出して、良くそこに座っていました。
あまり嬉しそうでもなく、どちらかといえば苦虫をかみつぶしたような顔で座っていたことを覚えています。
今日、久しぶりに「道に椅子を出して座っている人」の姿を見て、ふとそのことを思い出しました。
全国各地に、そういう風に町の景色の一部になってしまっているようなおじさんたちが、いるのでしょうかね。
いるんでしょうね。なぜか、少し笑ってしまいました。