はてな市民の物語 外伝

「普段からインターネットを見ている」なんて、恥ずかしくてちょっと赤面無しでは言えない感じなのですが、久方ぶりにあんまり笑ったので、一人でけらけらと声を上げているのももったいなく思い、転用します。(あ、これは本当は私が頭の中で考えた文章なので、実在するありとあらゆる人・もの・言葉と無関係です)

○○○書店 ○○様


メールを拝見しました。


>それには出来るだけはっきり状態を記載しているつもりです


ただ「シミ」とあるだけで「はっきり状態を記載しているつもり」とは納得できませ
ん。あの本の状態を「はっきり状態を記載」するのなら、「キツイ染みあり。またキ
ツイ、ムレあり。○〜○ページ茶色に変色。」とするでしょう。知り合いの古書店
今回の顛末を相談したところ、記載は不適正だと言っていましたよ。プロでなくても
シロウトだって分かることですよね。


>あのカタログは状態は悪いが2100円で適正だと 判断した
こんなことは聞いていません。私の言っているのは値段ではなく、状態が記載よりも
酷いと言っているのです。質問の意味を理解していただきたい。あの汚い状態で
は100円でも買いませんよ。


> こういう場合は当 店ではひとまずご返品していただきご返金するのがベターと考えて
います。


もはや理解できない論理です。自分のミスを棚に上げ、先に品物を返せと言う一方的
な態度。しかもお詫びの一言もない。商売をなさっている人間の態度とは思えません
ね。まあ当方は大人なので先に返すのは構いません。「 こういう場合は当 店ではひ
とまずご返品していただきご返金するのがベターと考えています。」と強弁するのな
ら、返送の方法(冊子・定形外・着払い・元払い)を書くのが常識なのでは。一方的
に返せという態度に呆れますね。「ベターと考えています。」とは自分にとって都合
がいいということですよね。つまりは返金しても商品が返ってこなかったら困るとい
うことと取れます。というよりそのものズバリか(笑)。


当方の否を書くなら、商品確認前に送金したことです。しかしそれは○○○書店さん
を信頼してのことです。結果的には裏切られた訳ですが。


当方の入金先は以下のとおり


郵便貯金ぱるる
●口座番号 ******
●名義人 ○○○ ○○○


とりあえずは返送の方法を伝えてくれなければ当方は動きようがありません。
連絡を待ちます。


それでは。
○○

これは、私の頭の中にある「サービス業クレームまとめサイト」にあった一例。
おそらく、古本屋さんで通信販売を利用して本を購入したお客様が、状態が商品紹介で記載されていたものよりひどかったとクレームとなり、本屋の方から「品物を戻せ」と言われてカチンと来て書いたものだと想像されます。
おそらく、これだけだとどこが笑いどころなのか分からない方もいらっしゃると思いますので、僭越ですが解説します。
以上の文章を見て分かるのは、このお客様が古書の業界をほとんどご存知ないということ。普段手紙をあまり書き慣れていないということ。「いわゆる他人」とのコミュニケーションに慣れていないということの三点です。その点を踏まえて、メールを頭からチェックします。

ただ「シミ」とあるだけで「はっきり状態を記載しているつもり」とは納得できませ
ん。あの本の状態を「はっきり状態を記載」するのなら、「キツイ染みあり。またキ
ツイ、ムレあり。○〜○ページ茶色に変色。」とするでしょう。

まず、これが古書の業界をほとんどご存知無い根拠となります。
古本を買うことに慣れた人間であれば、「シミ有」とわざわざ書いてある時点でそれは「欠損は無いが状態に難がある」というサインとなります。(欠損があれば「痛有り」「〜欠」という表記になるでしょう) つまり、「状態に対するクレームはお断りだよ」という符号となります。それをおして、「状態が悪いのでどうにかしてくれ」と言うのですから、「またおかしな素人が来たな」と思われるわけです。

「キツイ染みあり。またキツイ、ムレあり。○〜○ページ茶色に変色。」とするでしょう。

これもしません。絶対しません。古書の業界には「目録」と呼ばれるカタログが文化としてあるのですが、一ページに沢山の情報を入れるために極力記述を省くのが常識となっています。「いわゆる古書のお客さん」ならば、それで事足りるわけです。それで事足りなければ、常識の無いやつと思われて、お客と思ってもらえなくても仕方がありません。

知り合いの古書店に今回の顛末を相談したところ、記載は不適正だと言っていましたよ。プロでなくてもシロウトだって分かることですよね。

なんだか、鬼の首でも取ったかのような勢いです。
この時点で、おそらくクレームを受けた古書店の店主は、「じゃあ、そいつをオレの前につれて来い! 話しをしてやるから」、となっているはずです。古書の業界はかなり狭く、市場(いちば)があった際「知らない顔がいたらすぐに分かる」くらい閉ざされた世界です。ということは、当然同業者意識も高いわけで、角が立つことを言うことは避けるのが当たり前です。
ということは、この「知り合いの古書店」の店員は、クレームを付けたお客様に「話を合わせた」と考えるのが妥当で(だって、その「知り合いの古書店」業界の人なのですから)、それくらいは普通分かりそうなものなのです。「プロでなくてもシロウトだって分かることですよね。」と来た日には、「素人・玄人以前の問題だバカヤロウ!」と思われていることでしょう。

自分のミスを棚に上げ、先に品物を返せと言う一方的な態度。しかもお詫びの一言もない。商売をなさっている人間の態度とは思えませんね。まあ当方は大人なので先に返すのは構いません。

まず、ここで確認しておくべきなのは、古書店の店主は「自分のミス」だとは考えていません。なので、お詫びなど論外です。新刊の本屋と違って、古本屋は自分が手張りで買った品物を売っています。返本可能な場所貸し業とは違って、古本屋の店主は基本的に「自分の蔵書を分けてやってる」という意識で商売をしています。つまりこのケースでは、「おかしいヤツが客ヅラしてでかいこと言ってやがる」と思われているわけです。
あと、この手のネットクレームケースでは必ず登場するのはこのフレーズです。
「商売人のくせに、どういうことだ!」  
つまり、「オレは客だぞ。それなのに、お前の態度はなんだ」というヤツですね。
これでは、「自分のものを分けてやってる」古書店の店主と、「金を払ってやるんだからへこへこしろ!」という客はガチでぶつかりあうしかありません。
で、次は笑いどころですね。「まあ当方は大人なので先に返すのは構いません」 大人はこんなことは言いませんね。わざとかとも思いますが。でも、どちらにしろかなり若い方かと思います。

「ベターと考えています。」とは自分にとって都合がいいということですよね。つまりは返金しても商品が返ってこなかったら困るということと取れます。というよりそのものズバリか(笑)。

もう、このお客様が全く分かっていないのは、古書店の店主は一度送ってしまった品物が、帰ってこようとそうでなかろうと大して気にしていないだろうということです(高いものだったら別ですが)。「おかしいヤツとは付き合いたくないから、金戻して係わり合いになりたくない」と思って「返送しろ」と言っているのが私には良く分かるのですがいかがでしょうか。2,100円の本なら、おそらく仕入れは100〜200円くらいだと思われます。そのことを知らず、うがった見方をつらつらと書き連ね、いちいちこの古書店店主に腹を立てさせただろう手際は見事としか言いようがありません。わざとだったら、マジでできる人です。
しかし、知らない人に手紙を書くのに「(笑)」はすごいよな。それも、自分のこと大人って言ってるしな。すごい。


というわけで、メールを読んで爆笑。読んで苦い顔をしているだろう古書店の店主の顔を想像して爆笑。爆笑に次ぐ爆笑で、つい書いてしまいました。

(これじゃあ、終わらんで)