なんだか、人間にはバイオリズムだとかなんとか、そういう風な波があるようで、突然思い立って家にある漫画をぺらぺらとめくっています。
私は漫画を買い漁る方では無いのですが、それでもここ数年分の蓄積があり、ざっと本棚半分くらいでしょうか。
思い入れがあるから買うわけで、久しぶりに読み直してみると面白いと感じるものばかりですね。


ページをめくっていると、当時の熱狂が甦ってくる気がします。
私は結構ラブコメが好きなのですが(あの背筋が寒くなるような感覚がクセになる)、久しぶりに読んだ「きまぐれオレンジロード」は確かに背筋が寒くなり、やはり面白かったです。主人公が超能力者であるにもかかわらず、それが物語の小道具としてしか使われないというのが、すごいですね。お話のレベルも高いですし、ラストもしっかりしていています。そして、今見ると萩原一至が絵を描いていたということに、大きく納得が行くのでした。そういえば、その後発売されたまつもと泉のマンガの絵に感じた違和感も、それだったのですね。
個人的な意見では、これに匹敵するラブコメが生まれるまでには、ついこの前完結した「いちご100%」を待たなければならないと思います。こちらの作品は、背筋が寒くなる、を通り越して「背筋が氷る」ような体験を毎週提供してくれました。この河下水希という作家の、読者の神経をなぶる技術は超一級品です。


逆境ナイン」は、先ごろ映画化された際に求めたものです。
島本和彦の作品を読むのは、「風の戦士ダン」以来十数年ぶりだったのではないかと思うのですが、これはすごく面白かったですね。映画が面白かったのでつい買ってしまったのですが、マンガの方が面白かったです。
もう、全身全霊で島本和彦という印象で、野球マンガですが、野球はあんまり関係ありません。
主人公は、1回の表に顔面に打球を受けて気絶。気がついた時には、9回の裏。スコアーボードは115対3。さぁ、どうする!!
という部分に、このマンガの全てのエッセンスが詰め込まれています。
どうするもなにも無いって感じなのですが…… おもしろいよねー。
ただ、燃えよペンとどこが違うのでしょう。


山田玲司の「ゼブラーマン」は、マンガは面白かったけど、映画は見なかったくちですね。
灰色の人生を生きている小学校教師が、ヒーローのコスプレを身にまとい、やがて本物のヒーローになっていくという話です。
この作者は、なんかいつもフルスイングをしている印象があり、私の中ではブライアントとキャラがかぶります。
この作品は「当たり」の方でしょうか。
後半は今ひとつ乗り切れない印象ですが、二巻のラストのあまりの素晴らしさに最後まで新本で買い続けました。
今でも、二巻までは少年マンガの大傑作と言って間違いないと思います。
そういえば、「絶望に効くクスリ」は4巻まで買っていたのですが、だんだんつまらなくなってこちらは買わなくなってしまいましたね。


「GUN SLINGER GIRL」は、久しぶりにまとめ買いしたマンガでした。
一巻のあまりのおもしろさに腰を抜かし、次の日残り四冊をまとめて買いました。
前半は、兵器へと改造された少女たちの、日常と「仕事」をたんたんと書くマンガでした。
やがて、物語が転換期を迎えると、今度は少女たちの「敵側」の人物がクローズアップされてきます。
そして、激突。活劇へ。
特に、クライマックスである5巻の盛り上がりは凄いのひとことですね。この巻は、何度も何度も読みました。
「聞いて下さい。私勝ったんです!! 間違いなくピノッキオを殺しました! これも特訓のおかげです。
 ヒルシャーさん? 褒めてくれないんですか?」
まさに、カタルシス
あまりの燃焼度の高さに、続きが出ないんじゃないかとすら思いましたが、無事6巻が出ました。


「天才ファミリーカンパニー」は、現在「のだめカンタービレ」でほぼ完璧なストーリーマンガを連載中の、二宮知子の作品です。
主人公は、母子家庭の一人息子で、ハーバード大学に入りMBAを取って、アメリカのビジネスの世界で活躍したいと願う高校生。
母親の代わりにプレゼンの資料を作り、株でもうけ、英語ベラベラ。母親の給料明細を見るのが楽しみだった、という少年時代を持つ青年です。
そこに、ある日突然、母親の再婚相手が現れて……
なんか、陰惨な雰囲気を与えかねない設定ですが、主人公の前には次から次へと偉大な才能や人物が現れて、主人公が高い能力の持ち主でもなければ、とうてい太刀打ちできない有様。(青年は「俺は天才だけどその才能のあり方がちょっと地味だ」と悩んだりするわけです)
おそらく、創作物の中で表現するのが困難と思われる「才能」や「権力」というものを、現代版のフェアリーテールに置き換えるという現在の二宮知子のエポックメイキングにあたる作品だったのでは無いかと思います。
この作品自体は、「のだめ〜」に比べてバランスの悪いところがありますけど、そこに通じるものが全部入っている佳作ですね。
あと、全然関係ないことですが、主人公の義理の弟にあたる人物が出てくるのですが、これがほとんどパーフェクト超人のように描かれています。しかし、カメラの中心をそのパーフェクト超人にずらさず、すごく現世的な主人公を中心に最後まで話を持っていったことにいたく感心しました。万能な人物を作品の中で全力で活躍させたいという欲求は無かったのかな。それを押さえ込んだとすれば、大したもんだと。
二宮知子の作品は、「GREEN」と「平成よっぱらい研究所」も読み直しましたが、両方とも面白かったです。もう、十分完成された作家ですね。


「らぶヤン」(田丸浩史)は、アフターヌーンを読んでいた時代にあまりのばかばかしさに、つい単行本を買ってしまったのがなれそめでした。
当時は、「おおきくふりかぶって」と「げんしけん」が絶好調で、私は「二本以上面白い作品が載ってればその雑誌を買う」という主義なので当時は財布からお金を出してアフターヌーンを買っていたのでした(今は買っていません)。
「ひきこもりのオタクにカノジョを作るために、天使がやってくる」という、ドラえもんパターンのマンガです。
割とすぐ暴力に訴えたりする、実も蓋も無いところがむしょうにおかしいです。
その場の勢いと、くだらないセリフの応酬だけが全て(あと絵か)のマンガで、それが毎月載っていてそれなりにおもしろいのですから、おそらくこの人には才能があるのでしょう。
何かあるごとに「対決」になって、誰も得しないというパターンがとても多いのですが、そういうところが妙に共感できるとともに、とても好きです。


なんか、棒テン即リーって感じになってきたので、そろそろやめます。
流れの人が、絶対最後まで読みきれない量を書いておこうと思っていたのですが、もうダメです。
あと、ハチクロよしながふみ黒田硫黄と「真夜中の弥次さん喜多さん」の話を書く予定だったのですが……